下水処理場には様々な設備がありますが、とくに重要なのが「最初沈殿池(さいしょちんでんち)」と「
場所によっては第1沈殿池、第2沈殿池など違う言い方もします。
似たような名前の設備ですが目的や役割は異なります。
本記事では、初心者でも理解しやすいように工程の流れを追いながら、最初沈殿池と最終沈殿池の違いを解説します。
もくじ
最初沈殿池と最終沈殿池の概要
下水道処理場は「粗大ごみ除去 → 砂除去 → 最初沈殿池 → 微生物による処理 → 最終沈殿池 → 消毒」という順で水をきれいにしていきます。
最初沈殿池 では紙くずや泥など比較的大きなごみを沈め、後工程の負荷を軽減します。
最終沈殿池 は微生物による処理後微生物のかたまり(フロック)や細かな浮遊物を除去します。
下水道処理場の流れ
1、粗大ごみの除去(スクリーン):ビニール袋や枝などを大きなごみを取り除く
2、砂除去(沈砂池):砂や小石などを沈めて取り除く
3、最初沈殿池:水の中の大きな汚れを沈める
4、微生物による処理(曝気槽・エアレーションタンク):微生物の力で汚れを分解する
5、最終沈殿池:微生物を沈めて水と分ける
6、消毒・放流:きれいにした水を川に戻す
そもそも沈殿池(ちんでんち)とは?
沈殿池とは、下水の中に混ざっているゴミや汚れをゆっくり沈めて取り除くための池のことです。
例えば、バケツのなかに泥水を入れてし放置すると、だんだん泥が下に沈んでいき、上の水が透明になっていきます。
沈殿池は「重力によってゆっくり沈む」仕組みを使って、水を徐々にきれいにします。
・池の形状:長方形・正方形・円形の大
・池の構造:耐久性のある鉄筋コンクリート構造
・池の数は、最初沈殿池及び最終沈殿池は、それぞれ2池以上整備してあります。池を定期的に点検、清掃、補修等を行うため、片方が点検中にもう片方で運用する方式がとられています。
最初沈殿池の仕組みと役割
最初沈殿池とは、下水をゆるやかに流し、下水に含まれる沈みやす
仕組み
・汚水を約 1.5〜2 時間静かに流し、重力で浮遊物を沈殿させます。
・沈んだ汚泥は機械でかき寄せられて処理設備へ送られます。(汚泥を脱水し、焼却処分などを行います。)
役割
- 浮遊物(SS)を 40〜60 % 除去し、BOD (生物化学的酸素要求量) 25〜35 % 削減。
- ※BOD(生物化学的酸素要求量):水中の有機汚濁を示す代表的な指標であり、「微生物が有機物を分解する際に消費する酸素量(mg/L)」として定義されます。BOD値が少ないと、水中の有機物が少ない=キレイな水となります。
- 後段の微生物処理設備の負荷や故障リスクを低減。
最終沈殿池(さいしゅうちんでんち)とは?
最初沈殿池でゴミを取り除いた下水は 曝気槽(エアレーションタンク)と呼ばれる施設に流れます。
曝気槽は、下水と活性汚泥(微生物が含まれた泥)を
さらに空気を送り込むことで、微生物が活性化され、下水の中に
最終沈殿池では、反応タンクから送られてきた下水を、最初沈殿池
最終沈殿池について分かりやすい解説動画はこちらです↓
仕組み
曝気槽から出た水を 2〜4 時間静かに流し、活性汚泥を沈殿させます。
沈んだ汚泥は一部を曝気槽へ返送(返送汚泥)し、それ以外は処理設備へ送られます。
役割
- 上澄み水を放流・再利用可能な水質まで仕上げる。
- 標準活性汚泥法の循環サイクルを維持。
最初沈殿池と最終沈殿池の違いは?
最初沈殿池と最終沈殿池の違いを表で整理します。
最初沈殿池 | 最終沈殿池 | |
---|---|---|
位置 | 工程の前半 | 工程の後半 |
目的 | 大きな汚れの除去 | 微細な汚れ(活性汚泥)の除去 |
対象物質 | 紙くず、砂、油脂 | 活性汚泥(微生物のかたまり) |
汚泥の性質 | 未処理汚泥 | 活性汚泥 |
沈殿時間(目安) | 約 1.5~ 2時間 | 約 2~ 4 時間 |
特徴 | 流入負荷を減らし後処理を助ける | 活性汚泥を分離し処理水と分ける |
まとめ
最初沈殿池 はスタート地点で固形物を取り除き、最終沈殿池 はゴール地点で水質を仕上げます。
両者の役割を押さえることで、下水処理フロー全体の理解が一段と深まります。