高度成長期に整備された橋や道路、水道などのインフラは、建築から50年以上がたち、一斉に“老朽化”しています。壊れてから直すという発想では、住民の安全を守ることはできません。費用も高額になります。
そこで登場するのが、施設単位で延命を図る 長寿命化計画 と、資産全体を家計簿のように管理する ストックマネジメント計画(通称ストマネ)です。この記事では両者の違いと活用法をやさしく解説します。
もくじ
長寿命化計画とは? — 目的と背景
長寿命化計画は、橋や道路など 個別の施設 を対象に、点検→診断→補修を体系化し、ライフサイクルコストを抑えながら安全性を延ばす仕組み です。政府は 2013 年 11 月 29 日に「インフラ長寿命化基本計画」をとりまとめ、自治体や企業に行動計画の策定を求めています。
参照 国土交通省
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点検頻度・劣化度評価・補修優先度を数値化
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おおむね 30〜50 年先までの延命を見通す長期シナリオ
ストックマネジメント計画(ストマネ)とは? 目的と背景
ストックマネジメント計画は、道路・橋・下水管など多数のインフラを “在庫(ストック)” と捉え、資産全体を横断管理 します。国土交通省のガイドライン(2015 年版)が手順を示し、長期視点でサービス水準を保ちつつ 年度ごとの予算を平準化 することが目的です。
参照:国土交通省
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資産台帳を一元化し、GIS やクラウドで健全度を色分け表示
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毎年度の優先順位を自動更新し、予算と人員を最適配分
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長寿命化とストマネの違いを表で整理
視点 | 長寿命化計画 | ストックマネジメント計画 |
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対象範囲 | 施設ごとに深掘り | 資産群を俯瞰 |
期間の捉え方 | 施設の耐用年数を 30〜50 年先まで想定 | 数十年先を視野に入れつつ、年度ごとに費用を平準化し継続的に更新 |
成果指標 | 劣化度低減・延命年数 | ネットワーク健全率・年間コスト平準化 |
メリット・デメリット比較
長寿命化計画
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メリット:細部の劣化原因を特定しやすい/効果が短期で見える
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デメリット:全体の優先順位が立てにくい/データ取得コストが高め
ストックマネジメント計画
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メリット:予算と人員を横断的に最適化/将来負担を可視化できる
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デメリット:台帳整備に初期投資が必要/詳細診断が浅くなる場合がある
まとめ
長寿命化計画は施設単位で延命を図り、ストックマネジメント計画は資産全体を経営視点で最適化します。二つを組み合わせれば、安全性とコスト削減を同時に実現可能です。