セメントの種類を徹底解説!混合セメントからポルトランドセメントまで!

この記事では、工事で使うセメントの種類と特徴を整理して解説します。


そもそも「セメント」とは

石灰石・粘土・けい石・酸化鉄などを約1450℃で焼成して「クリンカ(石灰石などの原料を高温で焼き固めた中間製品。セメントの主成分となる塊状物質)」を作り、それをせっこう(硬化速度を調整するために添加される成分)と一緒に粉砕したものがセメントです。水と混ぜると水和反応が起きて固まる、コンクリートやモルタルの結合材です。

コンクリートはセメント・砂・砂利・水を配合したもの、モルタルはセメント・砂・水を配合したものです。セメント単体で使うことはなく、あくまで「材料の一つ」として使います。

セメントの分類

JIS規格(セメント協会)では、セメントは大きく以下の3種類に分類されています。

  • ポルトランドセメント — 最も基本となるセメント。国内で使用されるセメントの約70%を占める普通ポルトランドセメントをはじめ、6種類がJIS規格に定められている
  • 混合セメント — ポルトランドセメントのクリンカとせっこうに、高炉スラグ・フライアッシュ・シリカなどの混合材を加えたもの。耐久性や施工性を調整できる
  • エコセメント — 都市ごみ焼却灰を主原料として製造する環境対応型セメント。JIS R 5214で規定されている

このほか、白色ポルトランドセメント・アルミナセメント・膨張セメント・超速硬セメントなど、特定用途に特化した特殊セメント(JIS規格外品を含む)も現場で使われます。


ポルトランドセメント

世界で最も広く使われているセメントです。1824年にイギリスの煉瓦職人ジョセフ・アスプディンが開発し、固まったときの色や外観がイギリスのポートランド島で産出される建築材「ポートランドストーン」に似ていることから「ポルトランドセメント」と命名しました。

日本産業規格(JIS R 5210)では以下の6種類に分類されています。

種類 特徴 主な用途
普通ポルトランドセメント 汎用品。強度・コストのバランスが良い 一般的な土木・建築工事
早強ポルトランドセメント 3日で普通品の7日強度に相当する強度を発現 寒冷期工事、コンクリート製品
超早強ポルトランドセメント 早強の3日強度を1日で発現(現在は製造されていない) 参考:緊急補修
中庸熱ポルトランドセメント 水和熱が少なく、ひび割れリスクを下げられる ダム、大規模な橋脚工事
低熱ポルトランドセメント 水和熱をさらに抑えた高機能品 マスコンクリート、高強度・高流動コンクリート
耐硫酸塩ポルトランドセメント 硫酸塩侵食への抵抗性が高い 護岸工事、温泉地付近、化学工場

普通ポルトランドセメント

国内で使用されるセメントの約70%がこの種類です。材齢28日の圧縮強度はJIS規格で42.5N/mm²以上と定められており、一般的な構造物には十分な強度があります。

早強ポルトランドセメント

初期強度の発現性に優れるエーライト(C₃S)(ポルトランドセメントの主要鉱物成分のひとつ。水和反応が速く、初期強度の発現に大きく寄与する)の含有率を高め、粉末を細かく砕いて水との接触面積を増やしたセメントです。材齢3日で普通ポルトランドセメントの7日強度に相当する強度を発現します。冬場の低温環境では水和反応が遅れるため、寒冷期の工事で使われることが多いです。ただし水和熱が大きいので、断面の大きい構造物には向きません。

超早強ポルトランドセメント

早強ポルトランドセメントよりさらにC₃Sを多くし、粉末度を細かくしたもので、早強ポルトランドセメントの3日強度を1日で発現します。かつては緊急補修や寒中工事に使用されていましたが、現在は製造されていません。

中庸熱・低熱ポルトランドセメント

コンクリートが固まるときに発生する熱(水和熱:セメントと水が反応する際に生じる熱。断面の大きい構造物では内部に蓄積されてひび割れの原因となる)が内部に蓄積されると、内外の温度差でひび割れが起きやすくなります。ダムや大型橋脚のような大断面コンクリート(マスコンクリート:水和熱が問題となる断面寸法の大きいコンクリートの総称)では、この水和熱対策が設計上の課題になります。中庸熱・低熱セメントはその対策として使われます。

中庸熱ポルトランドセメントはダム・大規模な橋脚工事に向き、長期強度・乾燥収縮・耐硫酸塩性にも優れています。低熱ポルトランドセメントは**ビーライト(C₂S)**の含有率を40%以上に高めた構成で、水和熱をさらに低く抑えつつ長期強度に優れます。また、C₃Aが少なく高性能AE減水剤が有効に作用するため、高流動コンクリートや高強度コンクリートにも使用されています。

耐硫酸塩ポルトランドセメント

硫酸塩を多く含む土壌や地下水に接する構造物に使うセメントです。通常のセメントが硫酸塩と反応するとエトリンガイト(硫酸塩とセメント成分が反応して生成される膨張性の化合物。コンクリート内部で膨張し、崩壊を引き起こす)が生成され、コンクリートが内側から崩壊する「硫酸塩侵食」が起こります。耐硫酸塩ポルトランドセメントはC₃A(アルミン酸三カルシウム)(セメントの主要鉱物成分のひとつ。硫酸塩と反応してエトリンガイトを生成しやすいため、この含有量を低く抑えることで耐硫酸塩性を高める)の含有量を極力少なくすることでこの反応を防いでいます。

  • 護岸工事、海水中の構造物
  • 温泉地帯など硫酸イオン濃度が高い地域の構造物
  • 下水道管渠・汚水処理施設・化学工場

地盤調査で硫酸塩濃度が高いと確認された場合は、普通セメントではなくこちらを使うのが原則です。


📺 セメントの原料採掘から製造まで、VRで体感できる動画です

【UBE三菱セメント VR工場見学 九州工場・東谷鉱山篇】

URL:https://www.youtube.com/watch?v=oN2BQXq8Nyw

国内最大級のセメント製造能力を持つUBE三菱セメントの九州工場と、石灰石を採掘する東谷鉱山を360度映像で見学できます。石灰石の採掘からクリンカ焼成、粉砕までの工程を実際の規模感で確認できるので、「セメントがどうやって作られるのか」を映像で理解したい方にお勧めです。


混合セメント

ポルトランドセメントのクリンカとせっこうに、工業副産物や天然材料(混合材)を加えたものが混合セメントです。JIS規格で定める混合材は高炉スラグ・フライアッシュ・シリカ質混合材の3種類で、これらを単独で混合して作ります。混合材を加えることで耐久性・施工性・環境性能を調整でき、廃棄物の有効利用にもつながります。

高炉セメント

製鉄所の高炉で鉄を作る際に生じる副産物「高炉スラグ」(「水砕スラグ」とも呼ばれる。高炉から出た溶融スラグを水で急冷することで生じる砂状の物質)の微粉末をポルトランドセメントに混合したものです。高炉スラグ微粉末はセメントの水和反応で生じた水酸化カルシウムに刺激されると徐々に水和反応を起こす性質(潜在水硬性)を持ちます。長期強度の増進が大きく、耐海水性や化学抵抗性に優れます。「ゆっくり固まる」セメントであるため、初期の養生を丁寧に行う必要があります。

JIS R 5211では混合率によって3種類に分類されています。

種類 スラグ混合率 特徴
A種 5%超 30%以下 普通ポルトランドセメントに近い性質。初期強度が出やすい
B種 30%超 60%以下 現場で最も多く使われる。耐海水性・耐硫酸塩性のバランスが良い
C種 60%超 70%以下 長期強度・耐久性が高い反面、初期強度の発現が遅い。大型・特殊構造物向け

現場で「高炉B種」と言えばほぼ通じるくらい、B種の使用頻度が高いです。スラグの比率が上がるほど長期耐久性は増しますが、初期強度の発現は遅くなります。寒冷期や早期脱型が必要な場合はA種を選ぶこともあります。

海岸沿いの護岸工事では高炉セメントB種を指定することがほとんどです。海水中の硫酸塩や塩化物イオンに対する抵抗性が高く、ダム・港湾などの大型土木工事でも広く採用されています。

フライアッシュセメント

石炭火力発電所で発生する微細な灰(フライアッシュ)をポルトランドセメントに混合したものです。フライアッシュ自体は水和反応しませんが、含まれる二酸化ケイ素(SiO₂)がセメントの水和反応で生じた水酸化カルシウムと反応して水和物を生成します。この反応をポゾラン反応(火山灰などシリカ質の物質が水酸化カルシウムと常温で反応してセメントに似た結合物を生成する反応)といいます。

JIS R 5213では混合率によって3種類に分類されています。

種類 フライアッシュ混合率 特徴
A種 5%超 10%以下 普通ポルトランドセメントに近い性質で扱いやすい
B種 10%超 20%以下 ワーカビリティと水和熱低減のバランスが良く、最も一般的
C種 20%超 30%以下 水和熱の低減効果が大きく、大断面構造物に向く

良質なフライアッシュの粒子は球形で、コンクリートのワーカビリティ(コンクリートの運搬・打設・締固めのしやすさを示す施工性の指標)を高める効果があります。水和熱が低く長期強度も高いため、ダム・港湾などの大型土木工事や水密性を要求される構造物で使われます。またポゾラン反応によってアルカリシリカ反応(ASR)(コンクリート中のアルカリ成分と骨材中のシリカが反応して膨張するコンクリートの劣化現象)を抑制できる点も評価されています。

シリカセメント

天然のシリカ質混合材(二酸化ケイ素SiO₂を60%以上含むもの)をポルトランドセメントに配合したものです。フライアッシュと同様のポゾラン反応が起こります。耐薬品性に優れていますが初期強度が低く、主にコンクリート製品などに使われます。国内での流通量は多くありません。

エコセメント

廃棄物問題の解決を目指して開発されたセメントで、都市ごみ焼却灰を主原料として使用します。JIS R 5214で規定されており、エコセメント1tの製造につき原料として廃棄物を500kg以上用いることが定められています。2種類があります。

種類 特徴 主な用途
普通エコセメント 製造過程で脱塩素化し塩化物イオン量を0.1%以下に抑えたもの。普通ポルトランドセメントに類似した性質をもち、鉄筋コンクリートにも使用可能 一般的な土木・建築工事(高強度コンクリートを除く)
速硬エコセメント 塩化物イオン量が0.5〜1.5%と多く含まれる。速硬性に優れるが塩素量が高いため無筋コンクリートのみ使用可能 無筋コンクリート(道路補修など)

強度特性は普通ポルトランドセメントとほぼ同等です。鉄筋の有無によって使用できる種類が変わるため、設計段階での確認が必要です。


特殊セメント

特定の用途に特化したセメントです。一般的な土木工事では頻繁には登場しませんが、状況によって必要になります。

白色ポルトランドセメント ポルトランドセメントの灰色は酸化第二鉄(Fe₂O₃)によるものです。白色ポルトランドセメントはこの着色成分をできる限り含まないようにして白色に仕上げたものです。強度は普通品と同等で、外装タイルの目地や装飾コンクリートなど美観を重視する工事で使われます。製造工程が複雑なため普通品より高価です。

アルミナセメント(耐火セメント) ボーキサイト(アルミニウムの原料鉱石)と石灰石から作られた特殊なセメントで、速硬性と耐熱・耐酸性を兼ね備えています。練混ぜ後6〜12時間でおおむね普通ポルトランドセメントの材齢28日と同等の強度を発揮します。工業炉の内張りや耐火物の接着、緊急工事などに使われます。

膨張セメント 通常のセメントは硬化・乾燥時に収縮しますが、膨張セメントはカルシウムサルフォアルミネート(CSA)系または生石灰系の膨張材を加えることで体積が膨張します。収縮ひび割れの抑制やプレストレスコンクリートのグラウト(空隙や隙間に注入して充填・固化させる材料。PC鋼材の防錆や付着確保に使用)材、トンネル覆工のひび割れ対策として使われます。

超速硬セメント(ジェットセメント) 混練後2〜3時間で10N/mm²以上の圧縮強度を発揮するセメントです。凝結・硬化が速いため、制御材(凝結を一定時間遅らせるために添加する材料。作業時間を確保するために使用)を添加して作業時間を調整して使います。交通規制時間を最短にしたい道路補修、トンネルの吹付けコンクリート、グラウト材などに使われます。


セメント比較表

主要なセメントの性能を横断的にまとめた表です。◎・○・△・×は相対的な評価です。

種類 初期強度 長期強度 水和熱 耐海水性 耐硫酸塩性 施工性 コスト
普通ポルトランド
早強ポルトランド
中庸熱ポルトランド
低熱ポルトランド 極小
耐硫酸塩ポルトランド
高炉セメントA種 低〜中
高炉セメントB種 低〜中
高炉セメントC種 × 極小
フライアッシュB種 低〜中
エコセメント(普通)
超速硬(ジェット) ◎◎ ×(ポットライフ短)

※ 施工性の◎はコンクリートの流動性が高く打設しやすいことを示す。超速硬の×はポットライフの短さによる施工難易度の高さを示す。中庸熱・低熱の耐硫酸塩性○はいずれもC₃A含有量が少ないことによる。超早強ポルトランドセメントは現在製造されていないため表から除いています。


現場条件別・セメントの使い分けまとめ

どのセメントを選ぶかは、現場の条件によって決まります。よくある条件ごとに整理します。

一般的な土木・建築工事(特別な条件なし)普通ポルトランドセメント コスト・強度・施工性のバランスが最もよい。条件が特定されていなければまずこれを選ぶ。

寒冷期の工事、早期に強度が必要な現場早強ポルトランドセメント 気温が低いと水和反応が遅れるため、冬場の工事では早強が標準的な選択肢になる。早期脱型が必要なプレキャスト製品にも使われる。

夜間施工・交通規制時間を最短にしたい補修工事超速硬セメント(ジェットセメント) 数時間での供用再開が求められる場合に使う。ポットライフが短いため、制御材の使用と施工体制の整備が前提。

ダム・大型橋脚・大断面基礎(マスコンクリート)中庸熱ポルトランドセメント または 低熱ポルトランドセメント 水和熱によるひび割れが最大のリスク。フライアッシュセメントC種や高炉セメントB・C種を組み合わせた2・3成分系低発熱セメントを使うケースもある。

海岸・港湾・海洋構造物、塩害・硫酸塩劣化が懸念される環境高炉セメントB種 耐海水性・耐硫酸塩性・水密性のバランスが良く、海洋環境の構造物では事実上の標準品。護岸・桟橋・ケーソン・海底トンネルなど幅広く使われる。

硫酸塩を多く含む地盤・下水道施設耐硫酸塩ポルトランドセメント または 高炉セメントB種 地盤調査で硫酸塩濃度が高い場合や、硫化水素が発生しやすい下水道管渠・汚水処理施設では耐硫酸塩ポルトランドか高炉B種を選ぶ。

施工性を重視する工事(流動性を高めたい、打設困難な箇所)フライアッシュセメントB種 球形粒子のフライアッシュがワーカビリティを高める。高炉セメントとの3成分系で使うケースも増えている。

廃棄物・環境対応が求められる工事(特に自治体発注工事)エコセメント(普通エコセメント) 強度特性は普通ポルトランドとほぼ同等で、鉄筋コンクリートにも使用できる。速硬エコセメントは塩化物イオンが多いため無筋コンクリートに限られる。自治体の仕様書でエコセメント使用を指定しているケースがある。

耐熱・耐火が必要な施設アルミナセメント 工業炉の内張りや耐火物の接着など、高温環境が前提の場所に限定して使う。


まとめ

セメントは種類によって、強度の出方・水和熱の大きさ・耐久性・対応できる環境条件がそれぞれ異なります。地盤条件・施工時期・構造物の規模・求められる耐久性をもとに選ぶことが大切です。判断に迷う場合はセメントメーカーの技術窓口に相談すると、条件に合った種類を提案してもらえます。

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