推進工法とシールド工法の違いは?比較や使い分け【下水道 非開削工法】

都市部では建物や地下配管などが密集しているため、従来のように地面を掘り返して地下に管を敷設する「開削工法」が困難なケースが多くあります。

こうした状況に対応するために用いられるのが「非開削工法」と呼ばれる地表を大きく掘削せずに地下工事を行う技術です。

この記事では、非開削工法の中でも特に代表的な「推進工法」と「シールド工法」について、違いや選定基準をわかりやすく解説します。

非開削工法とは?

非開削工法は、地表面を広く掘削せずに地下に管や構造物を敷設する工法です。騒音や振動、交通への影響が少なく、都市部や住宅密集地でも安全かつ効率的に施工できます。

主な非開削工法の例

  • 推進工法

  • シールド工法

  • マイクロトンネル工法

  • HDD(水平ボーリング)工法

  • パイプインパイプ工法(管更生)

特に推進工法とシールド工法は、下水道や共同溝などのインフラ整備において幅広く利用されています。

推進工法(すいしんこうほう)とは?

推進工法は、あらかじめ掘った「発進立坑」と「到達立坑」の間を、油圧ジャッキで管を地中に押し込みながら進める工法です。管の先端に掘削機やカッターを取り付けて地盤を掘り、次々と管を継ぎ足していきます。

推進工法の特徴

  • 施工延長:50〜100m以上(条件により200m超も可能)

  • 適用管径:150〜3000mm程度

  • 対応地盤:砂質土、粘性土、玉石混じりなど

  • 主な用途:下水道、ガス管、通信管、電線共同溝など

比較的安価で施工でき、特に直線区間での中小口径管敷設に適しています。

◯動画で学ぶ!推進工法のしくみ
公益財団法人 東京都都市づくり公社が解説する映像はこちら▼

【動画:下水道の工事について(推進工法)】
公益財団法人 東京都都市づくり公社
https://gesuidounomori.jp/type/movie01-2/

シールド工法とは?

シールド工法は、シールドマシンと呼ばれる円筒状の掘進機を使って地中を掘削しながら、その後方で「セグメント」と呼ばれるコンクリートブロックを組み立て、トンネル構造物を構築していく工法です。

こちらも推進工法と同様に発進立坑と到達立坑を設けますが、適用範囲や施工スケールが異なります。

シールド工法の特徴

  • 施工延長:数百m〜3km以上(条件によっては10km超も)

  • 適用管径:1000mm以上(大口径)

  • 対応地盤:軟弱地盤〜岩盤まで(シールドマシンの種類による)

  • 主な用途:幹線下水道、地下鉄、共同溝、地下通路など

高精度かつ安全に長距離・大断面の施工が可能で、都市中心部での重要インフラ整備に多用されています。

◯動画で学ぶ!シールド工法のしくみ
公益財団法人 東京都都市づくり公社が解説する映像はこちら▼

【動画:下水道の工事について(シールド工法)】
公益財団法人 東京都都市づくり公社
https://gesuidounomori.jp/type/movie01-3/

推進工法とシールド工法の比較

以下の表で、両工法の違いをまとめてみましょう。

比較項目 推進工法 シールド工法
施工方法 ジャッキで管を押し込む 掘進機で掘り進めつつセグメント構築
延長目安 約50〜200m 数百m〜3km以上
適用管径 150〜3000mm程度 1000mm以上(大断面)
土質対応 多様な地盤に対応 専用マシンで幅広く対応
工事規模 中小規模 大規模インフラ向け
コスト 比較的安価 高コスト・高設備依存

選定のポイント

実際の現場では、以下の条件を総合的に判断して工法を選定します。

  • 地形・地質条件(玉石混じりや軟弱地盤など)

  • 管の延長や口径、施工の直線性

  • 周辺の交通・建築環境への影響

  • 予算と工期、工事規模

  • 地下埋設物の有無や占用状況

たとえば、住宅街の道路下に中小口径の下水管を敷設するなら推進工法、大規模な共同溝や都市鉄道の敷設ならシールド工法が選ばれることが多いです。

今後の展望と技術革新

非開削工法は、都市の持続可能なインフラ整備に不可欠な存在です。近年はAIによる姿勢制御、無人化施工の実用化も進んでいます。

災害時の迅速な復旧や老朽管の更新事業にも応用が進んでおり、今後ますます需要が高まる分野といえるでしょう。

まと

非開削工法は、都市部の下水道やインフラ整備を支える重要な技術です。

  • 推進工法は中小規模・中距離施工向けで、コスト効率が高い

  • シールド工法は大口径・長距離施工向けで、安全性と精度に優れる

それぞれの特性を理解し、施工条件に応じて適切に選定することが、インフラの品質と持続性を高める鍵となります。

参考資料・出典

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