谷止工(たにどめこう)という構造物がありますが、名前を聞いてもピンとこない方が多いと思います。実は私たちの暮らしを守るために欠かせない施設です。この記事では、谷止工の目的や役割をわかりやすく解説し、治山ダム(治山堰堤)との関係についても整理していきます。
もくじ
谷止工とは?
谷止工(たにどめこう)とは、山地や谷間の渓流に設けられる治山施設で、森林の保全や土砂流出の抑制を目的とした治山ダムの一種です。
大雨や融雪によって山腹から崩れた土砂が一気に流れ下ると、渓流の荒廃や山林の崩壊につながります。谷止工はそうした土砂を上流でせき止めたり、流れを安定させたりすることで、森林や農地の荒廃を防ぐ役割を担います。
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設置場所:山間部の谷筋や森林内の渓流
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役割:土砂をためて渓床勾配を安定させ、森林や農地を保全する
治山ダム(治山堰堤)とは?
治山ダムとは森林や山腹の崩壊を防ぎ、渓流の荒廃や下流への土砂流出を抑えるために設けられるダム状の構造物の総称です。
特徴
・川底の勾配をゆるやかにして、川の両側や山の斜面が削れないようにする
・山のふもとをしっかり固めることで、山の斜面が崩れないようにする
・川底にたまった不安定な土砂が動き出さないようにする
・土石流を食い止めて、下流に土砂が流れ出るのを防ぐ
人家のある下流域を守ることを主目的として土石流などを食い止める砂防堰堤(砂防ダム)とは異なり、治山ダムは森林の保全を目的としている点が大きな特徴です。
治山ダムと谷止工の違い
治山ダムは森林の保全を目的としたダム状の構造物の総称です。
「谷止工」は治山ダムの一種となります。
比較表で整理
項目 | 谷止工 | 治山ダム(総称) |
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定義 | 山地や谷筋に設置される治山施設。土砂をためて森林を保全 | 森林や渓流の荒廃を防ぐためのダム型施設の総称。谷止工や床固工を含む |
主な目的 | 土砂流出や土石流の抑制、森林・農地の保全 | 森林崩壊防止、渓流の安定、下流への土砂流出抑止 |
構造の特徴 | 貯砂機能を持ち、上流の勾配に変化が生じる | 種類により異なる(谷止工=貯砂型、床固工=固定型) |
効果・役割 | 渓流の安定化、土砂災害の軽減 | 山地・渓流の荒廃を防ぎ、森林と下流の暮らしを守る |
位置づけ | 治山ダムの一種(貯砂型) | 包括的呼称(谷止工・床固工などを含む上位概念) |
床固工との違いは?
治山ダムには「谷止工」以外にも「床固工」という構造物があります。
谷止工(たにどめこう)
山間の谷の途中に造られ、土石流や大量の土砂が一気に下流へ流れ出すのを食い止めるための施設です。谷そのものをせき止めるように設置されるので、主に「谷全体を守る」役割があります。
床固工(とこかためこう)
川や谷の底(川床)が水の流れでどんどん削られて深くなったり、周囲の斜面が崩れたりしないように、川底を安定させるための施設です。川に複数設けることで川が階段状になり、これにより川の流れをゆるやかにすることで、河底の侵食を防ぐ役割があります。
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谷止工は「土砂の流れを止める壁」
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床固工は「川底を安定させる階段」
谷止工が私たちの暮らしを守る
谷止工は山奥にあるため、普段の生活で目にすることは少ないかもしれません。しかし実際には、人家や集落を土砂災害から守り、山林や農地の荒廃を防ぐ重要な役割を担っています。もし谷止工がなければ、台風や豪雨のたびに下流域で大きな被害が発生していた可能性があります。
関連動画でさらに理解を深める
谷止工や治山ダムは専門的な施設のため、文章や写真だけではイメージが湧きにくい方も多いと思います。ここでは、実際の現場や解説を映像で確認できる動画をご紹介します。
1. 秋田県・石黒沢地区谷止工
秋田県で行われた「石黒沢地区谷止工」の事例を紹介する映像です。地域の暮らしを守るためにどのように谷止工が設置されているのか、現場の様子がわかりやすく紹介されています。
2. 静岡県「この施設を知っていますか?」
静岡県が制作した解説映像で、谷止工の目的や機能を初心者向けにわかりやすく説明しています。行政による公式の解説であるため信頼性が高く、基礎から学びたい方におすすめです。
まとめ
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治山ダムは総称であり、その中に「床固工」と「谷止工」が含まれる
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谷止工は治山ダムの一種で、土砂をためて森林や渓流を保全する施設
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砂防堰堤とは似ているが、治山(森林保全)を目的とする点が大きな違い
谷止工は普段は目立たない存在ですが、森林を守り、下流の暮らしを支える大切な構造物です。山道で見かけたときは、地域の安全を守る縁の下の力持ちであることを思い出していただければ幸いです。