反応タンクとは、水処理や化学プラントなどで使われるタンク(槽)のことです。
とくに下水処理場では、微生物や薬品を使って水の中の汚れや有害物質を取り除く重要な設備として使われています。
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「反応タンクってそもそも何?」
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「どういう反応をしてるの?」
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「どんな種類があって、どこで使われているの?」
本記事では反応タンクについて、図や事例も交えてわかりやすく解説します。
もくじ
反応タンクとは?
反応タンクとは一言で言えば、水の中の汚れや有害物質を取り除くために、化学反応や生物反応を行うための槽(タンク)です。
その目的は大きく3つあります:
主な役割 | 内容 |
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① 化学反応の場 | 薬品を加えて不要物質を沈殿・中和 |
② 生物反応の場 | 微生物による有機物の分解(活性汚泥など) |
③ 撹拌・混合 | 空気・薬剤・水などを均一に混ぜて反応効率を上げる |
反応タンクの仕組みをステップで解説【例:下水処理】
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流入した汚水が反応タンクに入る
前処理(粗大ごみ除去や砂ろ過)を経て、まだ汚れの残る水が流れ込む。 -
空気を送り込む(曝気)
ブロワで空気を送り、酸素を供給。これにより、酸素が好物な微生物(好気性菌)が活発になる。 -
微生物が有機物を分解
排せつ物や食品くずなどの「有機物」をバクテリアがエネルギー源として分解。 -
処理後は沈殿池へ
分解された水は次に「最終沈殿池」へ送られ、泥(活性汚泥)と分離されて、きれいな水になります。
▼参考動画 札幌市清掃施設「反応タンク」紹介
札幌市の清掃施設で使用されている反応タンクの紹介動画です。
やさしく解説してくれるので、初心者の方にもおすすめです。
反応タンクの種類とその特徴
反応タンクには主に以下のような種類があります。
種類 | 概要 |
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好気性反応タンク | 酸素がある環境で微生物を使って有機物を分解(活性汚泥法など) |
嫌気性反応タンク | 酸素がない環境で、メタン菌などを使って発酵・ガス化(メタン発酵など) |
化学反応タンク | 凝集剤・中和剤などの薬品を加えて不要成分を沈殿させる |
発酵・バイオリアクター | 食品・製薬分野などで酵母や細菌を使って生成物を作る(ビール・抗生物質) |
使用されている現場例
反応タンクは「下水処理場」だけでなく、さまざまな分野・施設で使われています。以下に、分野別に具体的な用途と特徴を解説します。
(1)下水処理場(公共インフラ)
目的:生活排水(トイレ、キッチン、風呂など)を微生物で分解し、水質を浄化
特徴:
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安定した処理性能
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ブロワによる曝気管理が重要
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処理量に応じて複数の反応タンクを並列使用
(2)食品・飲料工場(排水処理施設)
目的:洗浄水・調理残渣を含む排水の有機物除去
特徴:
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水質変動が激しいため、微生物の活性管理が難しい
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臭気・泡立ちの制御も重要
(3)化学・薬品工場(プロセス排水処理)
目的:薬品反応後に残るpH異常水、重金属、有機溶媒などの処理
特徴:
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排水の性質が強アルカリ・強酸など多様
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タンクは耐食性に優れたFRP製やSUS製が多い
(4)農業集落排水施設
目的:農村地域の生活排水・し尿の一括処理(都市下水道未整備地域)
特徴:
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小規模分散型施設が多い
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運転管理は簡易型が多く、維持管理者の負担が少ない構造に
(5)バイオマス発電施設(嫌気性消化槽)
目的:家畜ふん尿・食品残渣などを嫌気的に分解し、メタンガスを回収
特徴:
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メタン発酵によりバイオガスを得る
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タンク内は密閉状態、ガス爆発リスク管理が必要
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温度制御(35℃前後)や攪拌も重要
(6)研究施設・大学など
目的:微生物の培養実験、反応時間の検証、薬剤効果の評価など
特徴:
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小型透明アクリルタンクなどで視認性重視
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攪拌機やpHセンサー、DOセンサーなどを併用
まとめ
この記事では、「反応タンクとは何か?」という基本的な定義から、その役割・仕組み・種類・使われている現場まで、幅広く解説しました。
反応タンクは、水や薬品、空気、微生物といったさまざまな要素が反応する場として機能し、私たちの生活を見えないところから支えています。特に下水処理や工場排水など、社会インフラや環境保全においては中心的な役割を担う装置です。
要点を振り返ると…
本記事のまとめポイント
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反応タンクとは?
水や薬品、微生物を反応させて水をきれいにするタンクのこと -
主な役割は3つ
「化学反応」「生物反応」「撹拌・混合」 -
種類もさまざま
好気性/嫌気性/化学反応型/発酵・バイオリアクターなど -
使われる場所も多岐にわたる
下水処理場・工場・バイオマス発電・研究施設など