私たちの身近にある川。散歩道や橋の上から眺める川もあれば、ニュースで洪水や氾濫の映像を見る川もあります。
実はこれらの川には、法律で定められた「区分」があることをご存じでしょうか。それが「一級河川」と「二級河川」です。
普段生活していると、川の区分を意識する機会はほとんどありませんが、この分類は防災対策や水の利用計画、行政の動き方に深く関わっています。
今回は、法律の定義から日常生活との関わりまで、やさしく解説していきます。
もくじ
川はどうやって区分されるのか
川は山や丘の斜面から生まれ、小さな流れが支流として集まり、やがて大きな本流となって海や湖に注ぎます。
この「本流とすべての支流をひとまとめにした範囲」を水系といいます。たとえば「利根川水系」といえば、利根川本流とそこへ流れ込む全ての支流を指します。
一級水系と一級河川
1965年に施行された河川法では、日本中の川を安全に管理するために、川を区分する仕組みが導入されました。
その中で「一級水系」と呼ばれる水系は、国土の安全や経済活動にとって特に重要と判断されたものです。
ここでいう国土保全上重要とは、大きな洪水や高潮が発生した際、人命や財産に甚大な被害が及び、それを防ぐことが国家的課題である場合。
国民経済上重要とは、その川の水が飲料水、農業用水、工業用水、発電などに使われ、その影響が地域を超えて全国的に及ぶ場合を指します。
この一級水系の中で、河川法の管理対象として国土交通大臣が区間を指定した川が一級河川です。
管理の主体は原則として国(国土交通省)ですが、区間によっては都道府県や政令指定都市が管理する場合もあります。
例:
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利根川(群馬県、埼玉県、千葉県など)
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淀川(滋賀県、京都府、大阪府)
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信濃川(長野県、新潟県)
🎥【動画でみる】利根川紀行
一級河川利根川の自然や歴史などが紹介されています。
二級河川とは
一方、二級河川は一級水系以外の水系であっても、その地域にとって重要な役割を果たす川です。
ここでいう「公共の利害に重要」というのは、洪水や渇水、川の利用による影響が地域の経済や生活に大きく関わることを意味します。
規模としては一級河川より小さい場合が多いですが、地元では欠かせない水源です。
指定は都道府県知事が行い、県が管理します。
例としては以下のような川があります。
例:
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甲突川(鹿児島県)
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山崎川(愛知県)
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新川(北海道)
同じ水系内には一級と二級は混在しない
重要なポイントは、一級河川と二級河川は水系が異なるということです。つまり、同じ水系内に両方が存在することはありません。
このため、例えば埼玉県や滋賀県には二級河川が存在しません。県内を流れる主要な川がすべて一級水系に属しているからです。
その他の河川区分
河川法では、一級・二級以外にも以下の区分があります。
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準用河川:市町村長が指定し、河川法の一部を適用する川
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普通河川:河川法上の「河川」には該当しない小規模な川や水路
これらは規模が小さい場合が多いですが、地域の水環境・景観を形づくる重要な河川となります。
一級と二級の違いを表で整理
項目 | 一級河川 | 二級河川 |
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水系 | 一級水系に属する | 一級水系以外に属する |
重要度 | 全国的に重要 | 地域的に重要 |
管理者 | 国土交通大臣(国)※一部区間は都道府県等 | 都道府県知事(県) |
例 | 利根川・淀川・石狩川 | 甲突川・山崎川・新川 |
一級河川と二級河川はどこで確認できる?
一級河川や二級河川は、法律(河川法)に基づいて国や都道府県が指定しています。
そのため、どの川が一級か二級かは、公的な情報源で確認できます。
全国の一級河川は国土交通省が管理しており、同省の公式サイトに各河川の詳細が掲載されています。
【国土交通省】日本の川 全国の一級河川を紹介
一方、二級河川は都道府県が指定・管理しているため、確認先は各都道府県の公式ホームページをご確認ください。「二級河川の一覧」や「河川指定告示」のページなどから川の名前や位置、区間を知ることができます。
また、国土地理院の地理院地図では、地図上に川を表示し、場所や流域の広がりを視覚的に確認できます。地図を拡大して川をクリックすると、名前や区分が分かる場合もあります。
まとめ
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一級河川は全国的に重要、国が管理(区間によっては都道府県)
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二級河川は地域的に重要、都道府県が管理
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区分は「水系」の違いに基づき、同じ水系に両方は存在しない
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準用河川・普通河川も含め、川は多様な役割を持つ
身近な川の区分を知ることは、防災意識を高めるだけでなく、その地域の歴史や暮らしを理解するきっかけにもなります。
ぜひ一度、地元の川がどの区分なのか調べてみてください。
河川法の条文についても合わせてご確認ください。
参考:河川法:e-Gov法令検索