河川と砂防の違いとは?役割や仕組みをわかりやすく解説

「河川と砂防って何が違うの?」

土木や防災の話題でよく耳にするけれど、言葉は似ていて意味はちょっと違う。なんとなくわかっているつもりでも、きちんと説明するのは難しいかもしれません。

この記事では、「河川」と「砂防」の違いと関係性について、現場での実例や制度、目的、法律の観点も交えながら、やさしく丁寧に解説していきます。


河川とは何か

「河川」とは、読んで字のごとく“川”ですが、法律上はもう少し厳密に定義されています。

国の法律である「河川法」では、公共の利害に関係する水の流れのうち、国や地方公共団体が指定・管理するものを「河川」と定義しています。つまり、ただの自然の川ではなく、治水や利水の対象として整備・管理されている“公的な川”という意味です。

たとえば、多摩川や利根川といった大規模な一級河川は国(国土交通省)が直接管理していますが、中小規模の河川(二級河川や準用河川など)は都道府県や市町村などの自治体が管理するケースもあります。

河川の主な役割は、大きく以下の3つに分類されます:

  • 洪水を防ぐ(治水)

  • 飲料水や農業・工業用水などに活用する(利水)

  • 生態系や景観を守る(環境保全)

これらの目的を達成するために、堤防や水門、ダムなどの河川施設が整備され、定期的な点検・補修が行われています。


砂防とは何か

一方の「砂防(さぼう)」とは、川そのものではなく、山から流れてくる土砂災害を防ぐ仕組みのことです。特に日本のように山が多く、豪雨が多発する国では、砂防は非常に重要な防災対策です。

たとえば、大雨の後に山の斜面が崩れ、土砂が一気に谷を流れ下ってくると、下流の河川に大量の土砂が流れ込み、洪水や堤防の決壊、家屋の倒壊など深刻な被害につながります。

これを未然に防ぐために整備されるのが、「砂防えん堤」「床固工(とこがためこう)」「渓流保全工」などの施設です。これらは、土砂の流出を抑えたり、流れてきた土砂を一時的にとどめて下流への影響を最小限に抑えたりする役割を担います。

つまり、砂防は「土砂」対策、河川は「水」対策。役割は異なりますが、両者は密接に連携して災害リスクを減らす取り組みを支えています。


河川と砂防の違い

両者の違いを簡単に整理すると、以下のようになります。

項目 河川 砂防
主な対象 土砂
管理対象 川の本流・支流 山の斜面・渓流など
担当法令 河川法 砂防法・地すべり等防止法
主な施設 堤防、水門、ダムなど 砂防えん堤、床固工、渓流保全工など
管理主体 国・都道府県・市町村(河川管理者) 国または都道府県(地形や事業規模により異なる)

制度や役割は異なりますが、実際の現場では密接に関連しています。

たとえば、上流で土砂災害が起これば、下流の河川整備にも直接影響が出ます。そのため、砂防計画と河川整備計画は連携しながら運用されることが多いのです(ただし制度上は別建てで策定されます)。


例え話:バケツとホースの関係

少しイメージしやすいように、例え話をしてみましょう。

河川は「水を流すホース」、砂防は「泥やゴミが入らないようにするバケツ付きのフィルター」のようなものです。

ホースだけで水を流しても、山から泥や石が流れてきたら詰まってしまいます。そこでバケツのようなフィルターで上流の異物(=土砂)を取り除く必要があります。

つまり、**砂防がしっかりしていないと、河川は本来の機能を果たせません。**逆に、河川の整備が不十分であれば、土砂を止めても下流で水害が起こる恐れがあります。

このように、河川と砂防はそれぞれの専門性を生かしながら、安全な流れを一体的に支えているのです。


なぜ今、砂防の重要性が高まっているのか

近年、気候変動の影響によって、線状降水帯による豪雨や短時間の集中豪雨が頻発しています。いわゆる「想定外」が日常的に起きるようになり、土砂災害のリスクが全国的に高まっています。

特に中山間地域では、森林の荒廃や高齢化により、斜面の管理が難しくなっており、土砂災害警戒区域の指定件数も年々増えています。

このような背景から、国や自治体は「土砂災害防止法」に基づき、危険箇所の可視化や避難体制の整備、砂防施設の重点的整備を進めています。

ただし、ハード対策だけでは限界があるため、今後は「ソフト対策(避難誘導・地域の防災教育)」との組み合わせが不可欠です。

🟩 関連動画:砂防施設のリアルな整備プロセス

砂防堰堤がどのように整備されるのか、実際の工事映像を交えてわかりやすく解説。現場の臨場感が伝わる貴重な資料です。


おわりに

河川と砂防は、それぞれ独立した制度や技術体系を持っていますが、目的は共通しています。
それは、「自然の力から人々の暮らしを守ること」。

日本のように急峻な山と短い川が連続する地形では、山の上流から川の下流まで、一体的な視点で整備することが不可欠です。

この記事を読んで、もし近くの川や山を歩く機会があれば、「この川の上流にはどんな砂防施設があるのだろう?」と想像してみてください。
日常の風景が少しだけ違って見えるかもしれません。

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