
結論から言えば、ピアとは橋脚の英語表現であり、基本的には同じ構造物を指します。
ただし、実務では「橋台(abutment)」と区別するため、中間支点に位置する橋脚を“ピア(P1、P2…)”と呼ぶことが多いというニュアンスの違いがあります。
本記事では、
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ピアとは何か
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ピアと橋脚の正しい関係
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軽く誤解されやすいポイント
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ピアの構造・役割・種類・施工・維持管理
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実在する YouTube 動画も交えてビジュアルで理解
などを、一般の方にも分かりやすくまとめています。
もくじ
1. ピア(pier)とは?
ピアの定義
橋の中間に設けられ、上部構造(桁・床版など)を支える柱状の下部構造です。
この構造物を日本語で「橋脚(きょうきゃく)」と呼び、英語では pier と表現します。
つまり、
橋脚(日本語)= pier(英語)
という関係です。
なぜ「ピア」と言うのか?
実務では、設計段階から現場施工までP1、P2、P3…
という番号管理がしやすいことから、
中間支点の橋脚を「ピア」と呼ぶ文化が根付いています。
このため、現場では「P3ピア」と呼ぶことが多く、
ピアという言葉が一般にも広く使われています。
2. ピアと橋脚の違いとは?
結論としてはピアと橋脚は構造として同じ(呼び方の違い)です。
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橋脚:日本語の正式名称
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ピア(pier):英語の呼び方
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実務では「中間にある橋脚」を指す言い方としてピアを使うことが多い
つまり、別の構造物ではありません。
■ 実務上の使い分け(ニュアンス)
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橋台・アバットメント(abutment):橋の両端
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ピア(pier):その間の中間支点
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橋脚(きょうきゃく):橋台・ピアを含む橋の脚部の総称だが、一般には中間支点の柱を指す意味で使われることも多い
分類図で示すとこうなります。
橋台(Abutment) ── ピア(Pier) ── ピア(Pier) ── 橋台(Abutment)
日本語:橋台 日本語:橋脚 日本語:橋脚 日本語:橋台
ややこしく見えますが、まとめると:
橋脚の英語が pier(ピア)であり、実務上は中間支点の橋脚を「ピア」と呼ぶことが多い。
3. ピアの役割
ピア(橋脚)は、橋全体の安全性を左右する重要構造です。
代表的な役割は以下の通りです。
① 上部工の荷重を支える
床版・主桁・車両荷重・歩行者荷重・積雪荷重などを受け取り、
地盤へ確実に伝える支点となります。
② 地震時の力を吸収
日本は地震が多く、ピアは
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曲げ
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せん断
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軸力
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慣性力
を受けるため、耐震設計が特に重要です。
阪神淡路大震災以降は、
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鋼板巻立て
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RC巻立て
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せん断補強
などの補強が広く行われています。
③ たわみをコントロールする
ピアの位置・高さ精度は、橋全体の
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たわみ
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路面の滑らかさ
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走行安全性
に直結します。
④ 流水・衝突など外力に耐える
河川橋では、
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流木
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氷
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台船・船舶の衝突
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洪水時の流水圧
にも耐える必要があります。
(動画①)橋の全体構造をイメージ
ピアの役割を理解しやすい動画(国交省 四国地方整備局)です。
桁がどのようにピアに載るのかが視覚的に分かります。
▶【現場へ行こう!】国道196号 今治道路で新しい橋が架かる瞬間を特等席で!
https://www.youtube.com/watch?v=UVmhtKYqJqw
4. ピアの構造
ピア(橋脚)は次の4つの基本構造で成り立ちます。
① 基礎(foundation)
地盤へ確実に力を伝える最重要部分。
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杭基礎(場所打ち杭・鋼管杭など)
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直接基礎
が使われます。
② フーチング(footing)
基礎の上に設ける大きなコンクリート台座で、
荷重を面で分散させる役割があります。
③ 柱(ピア本体)
もっとも目にする部分で、
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単柱式
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二柱式
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壁式
などがあります。
④ ピアキャップ(pier cap)
柱の上にあり、支承(ベアリング)を載せる部分です。
ここは数ミリ単位の精度が要求されます。
5. ピアの種類
ピアの形状は橋種や立地条件で大きく変わります。
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単柱式ピア
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2柱式ピア
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壁式ピア
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多柱式ピア
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ラーメン構造ピア
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鋼製ピア
都市部では単柱式、高速道路高架では鋼製、河川橋では壁式が用いられることが多いです。
(動画②)橋の下部工〜上部工までを一気に理解
ピア(橋脚)だけでなく、橋の構造全体を理解できます。
▶ 橋梁工事/様々な専門工事業(下部工②~上部工~橋面工)(#土9)
https://www.youtube.com/watch?v=W8XlUlfDr_g
6. ピアの施工方法
一般向けに流れを分かりやすく整理します。
① 地盤調査
ボーリング調査・SPTで地盤を把握し、基礎形式を選定。
② 基礎工
杭の位置決め → 杭打設 → 杭頭処理。
③ 躯体(ピア本体)
鉄筋組立 → 型枠 → コンクリート打設 → 養生。
④ ピアキャップ
支承レベルの精度管理が非常に重要です。
7. なぜピアは重要なのか?
① 外力を最も受ける
地震・衝突・流水など、多方向から強い力を受けます。
② 施工精度が橋全体に影響
ピアの高さや位置がズレると、
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桁架設
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道路線形
に大きな影響が出ます。
③ 後からの修復が困難
巨大構造物のため、大規模な改造は容易ではありません。
そのため、最初の設計・施工が特に重要です。
(動画③)ピアの点検・維持管理のイメージ
橋梁点検の考え方が分かりやすく紹介されています。
▶【やってみよう橋梁点検⑤】~診断のポイントを理解しよう!~
https://www.youtube.com/watch?v=6JKSDy0R96c
8. ピアの維持管理
道路法施行規則により、橋梁は原則 5年に1回の近接目視点検が義務化されています。
点検項目は、
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ひび割れ
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剥離・はく落
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かぶり不足
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鉄筋腐食
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支承周りの損傷
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洗掘
など。
近年は、
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ドローン
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3Dモデル
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AI画像診断
も用いられ、効率化が進んでいます。
9. まとめ
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ピア(pier)は橋脚の英語表現であり、構造としては同じもの。
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実務では、橋台(端部)と区別して「中間の橋脚」をピアと呼ぶことが多い。
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ピアは地震・衝突・流水など多くの外力を受ける重要構造で、設計・施工・維持管理すべてが重要。